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2025年注力テーマ「ユーザーファースト」の取り組みについて

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こんにちは、Engineering Officeの守谷(emim)です。

この記事はKINTOテクノロジーズ Advent Calendar 2025の11日目のものです。

2日目に、アクセシビリティについての記事を投稿しましたが、私の主領域はプロダクトデザインです。主軸では、Engineering Officeのメンバーとしてデザイナーの立場でKINTOテクノロジーズ(以下KTC)の状況をとらえ、組織力を上げるための取り組みを行っています。

KTCでは2025年の注力テーマとして、副社長の景山より、2つのテーマ「AIファースト」「リリースファースト」とともに、それを下支えする「ユーザーファースト」と「組織インテンシティ」が掲げられました。

https://blog.kinto-technologies.com/posts/2024-12-25-LookBack2024/

私はこのうちデザイナーとして、「ユーザーファースト」推進活動に関わっています。私自身は6月入社ですが、このユーザーファーストについての活動は、今年のはじめから様々な方向での組織内の取り組みがおこなわれています。

今回は2025年の総括として、我々の実行した内容をまとめて行きます。

はじめに着手した社内調査から、社内での「ユーザー」の認知にブレがあることがわかった

まず初めに行われたのが、ユーザーファースト推進において主軸となる「ユーザー」についての組織内での認知調査です。

ひと口に「ユーザー」と言っても、全員が同じ対象をイメージできているのか?という確認からです。ユーザーが一般的な用語だからゆえの解釈の違いを明確にした後に、具体の推進方法を検討するための調査です。

様々な部署、様々なロールのメンバーを全社から招集し、グループディスカッションを通し現状を把握しました。オンラインホワイトボードツールでの実施や、オンサイトでの付箋でのワークなど、開催形態は様々です。

4組のグループで行われたディスカッションの様子を表す付箋の俯瞰図

調査が一通り終わったところで私が参画したこともあり、次に、ビジネスモデルと照らし各階層のユーザーからエンドユーザーまでと製品との関係性を、Jeff Patton氏の提唱するThe onion modelのような形での整理しました。

そこから見えてきたのは、我々の向かう製品とユーザーとの間にかなり距離があることでした。またその距離の遠さからか、事業の複雑さからか、ステークホルダー(チーム内で例えば上下関係のある別職域の人や、取り引きをしている関係会社/グループ会社の担当者、依頼主など)をユーザーと捉えている人も居そうなことがわかりました。

ビジネスモデルと照らし各階層のユーザーからエンドユーザーまでとシステムの関係性を表す図と、サービスとユーザーとの距離を表した図

「ユーザーのことが見えていない」という課題感からユーザーファーストというテーマが上がってきましたが、開発組織構造も関係していることがわかりました。開発者とユーザーに距離がある場合、どのようにステークホルダーを巻き込み意識付けを行い、ユーザーの要求事項を聞き出すのか、が次のステップになる、と考えました。

これらの情報は、この活動のオーナーである副社長にも共有し、齟齬なく活動を推進していけることの確認にも利用できました。

「UXの成熟度モデル」を参考にした現状分析と推進の次の一手の「共有」

組織課題が明らかになったところで、次に我々が着目したのが

  1. 「ユーザー」というワードが開発の現場で出てくるための意識付け
  2. 「ユーザー理解」のためのメンバーの巻き込み

という2点です。前者については、プロダクト/サービス開発をする以上当たり前のことだと感じるかもしれませんが、全開発者がユーザーに向き合えているかというとまだまだだ不十分という状況です。

このあたりの肌感を探る為、The 6 Levels of UX Maturity(UXの成熟度モデル)を参考にしながら、現状分析を行いました。このドキュメントには後半に自身で組織の状態を評価(推定)のできるテストが用意されています。

内容及びテストの結果からして、まだ我々は「Stage 2: Limited(限定的)」にいます。現在地が明らかになることで、次レベルの「Stage 3: Emergent(新興)」へ向かうために何をすべきか、という観点の確認が可能となります。

UXの成熟度モデルを参考に、重要な内容を社内向けにサマライズした表のキャプチャー:弊社は「限定的(Limited)レベル」にいて、UXへのアプローチが不規則。専門役職、プロセス、予算が存在しない。と表されている

幸いなことに、一般的な組織で次に課題となる「会社側の理解がない(予算がつかない)」という状況にはありません。トップダウンで課題提起がなされている分、動きやすいと感じます。

組織の情報共有の仕組みとしては、他の注力テーマと定期的に情報共有をする機会(定例会議)が設定されています。それにより、例えばリリース分脈でユーザーについての相談をもらえるような関係にあったり、我々からも今後の取り組みとしてAI活用についての相談を上げたりしています。

ただしこれだけでは、限定的な範囲での情報共有となってしまいます。そこで次に、広く全社に向けての情報共有会を行いました。

UXが孤立しないための取り組み

我々の推進活動の共有

まず取り組んだのは、月に一度全社に向けて行われる情報共有会での活動報告です。

事前に各所と合意を得た「現在地」についての改めての報告と、開発者の多い現場でどうしたら「ユーザーの価値」に着目できるのか?という点に絞ってプレゼンを行いました。

「ユーザーにとっての価値」を考え抜く、そして習慣化させるをテーマにした資料と、アジャイル開発の図と人間中心デザインの図の類似性を指摘した上でいずれも「ユーザー」が大事であることを示した資料、2枚分の資料のキャプチャー

「ユーザーの価値」を中心に据えた開発手法として、アジャイル開発と人間中心デザイン(Human Centered Design 、以後HCD)の類似性を引用しながら説明を行いました。

アジャイルの図はよく目にするエンジニアでも、HCDについては初めて耳にしたというリアクションが出ていました。HCDの各プロセスには具体の手法が提供されていることも合わせて提示したことで、この1度の発表だけでエンジニアからでも具体の相談の上がりやすい状況に転換できました。

社内の先行事例の発掘(勉強会の実施)

次に着手したのが、先行事例として取り組まれている方たちをクローズアップし、改めて社内にその活動を共有する勉強会を開催しました。勉強会を通し、「自分達でもできそう」という感覚を持ってもらうことを目的としています。

この勉強会では、具体のHCDプロセスをプロジェクト内で回している事例と、兄弟会社のKINTOの主催のイベントに赴き、ユーザーのサービス利用の状況把握に努めた事例について、改めて発表をしてもらいました。

後者については、過去にこのブログでも本人が記事を起こしてくれています。

https://blog.kinto-technologies.com/posts/2025-08-22-FACTORY_ReportOfRealEvent/

さらに、エンジニアの多い会社であることをふまえ、前述の取り組みをしたフロントエンドのエンジニアや、インタビューを実行したバックエンドのエンジニアを招聘し、パネルディスカッションを通して、具体の心境の変化などを共有してもらいました。

エンジニアの投影資料「課題分析結果」の表示されたスライド写真と、パネルディスカッションに参加してもらった3人のエンジニア:左から金田(BE)、中原(FE)、岡野(FE)。背景にスライド「パネルディスカッション:ユーザーテスト/ユーザーインタビューの準備について」と表示されている写真が並列表記されている

この勉強会以降、具体のユーザーインタビューやカスタマージャーニーマップなど、ユーザーニーズを掘り下げるような具体手法についての相談が上がってくる、という変化が起きました。最近は半月に1件くらいのペースで相談をいただいています。

今後の我々の活動について

現在、この取り組みは私ともう一人、クリエイティブGの大金とで行っています。暫定的に、ユーザーファースト推進活動の社内プロモーションや色々なプロセスの型化/横展開を行う守谷と、プロジェクト内に入ってHCDプロセスを実行していく大金と、という役割分担にしてはいますがもちろん手が足りてはいません。

前述のように、具体のプロセスを実行できる仲間を増やしたり、近い領域の人たちに声を掛け協力を仰いで、この活動を止めない事が最重要ではないかと考えています。また、今回こういった活動を改めて発表をおこなったことで、これまで各領域で埋もれていた活動(=いわゆるサイロ化現象が起きていた)なども、情報として表面化するようになってきました。

冒頭紹介の通り「2025年の」注力テーマのひとつではありますが、ユーザーのことを考えるのはプロダクトデザインの基礎の基礎。せっかくのこの取り組みの火を絶やさないよう、来年以降も研鑽をし続けようと考えています。

最後に。12月23日にはKINTOテクノロジーズ Advent Calendar 2025にて、ともにこの活動を行う大金から彼女自身の挑戦についての記事が公開されます。お楽しみに!

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