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視覚障害者の私がKINTOテクノロジーズに入社した理由

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この記事は KINTOテクノロジーズ Advent Calendar 2025 の9日目の記事です🎅🎄

初めに

こんにちは。11月に KINTOテクノロジーズ に入社した辻勝利です。
私は20年以上、デジタルアクセシビリティの分野で働いてきたエンジニアで、生まれたときから全盲の視覚障害者です。

この記事では、なぜ視覚障害者の私がモビリティを専門とするKINTOテクノロジーズに転職したのか、そして今後どんな未来を目指しているのかをお話しします。少し未来を見据えた、夢のような話になるかもしれませんが、ぜひ最後までお付き合いください。

視覚障害者と「移動」の課題

私は長崎県佐世保市で生まれました。長崎といえば坂の町。電車よりもバスが普及していましたが、私の家はバス停からも距離があり、視覚障害者が独力で日常生活を送るのは現実的ではありませんでした。

子供のころ、各家庭には自家用車があり、移動は車が中心。私が移動するには、家族に車を運転してもらうしかありませんでした。

30年ほど前に上京したとき、駅までの道を覚えれば電車で自由に移動できることに感動したのを覚えています。それほど、地方での生活は私にとって「移動の自由」がないものでした。

今住んでいる場所も駅から遠く、視覚障害者には不便な環境です。しかし、リモートワークで仕事をしながら、窓から聞こえる鳥の声に耳を傾ける生活はとても心地よいものです。視覚障害者の知人からは「不便ではないか」と心配されますが、3年住んでみて、日常生活に大きな不便は感じていません。

自動運転への憧れ

皆さんは「車の自動運転」にどれくらい興味がありますか?
私はこの場所に引っ越してから、自分の意思で自由に移動できる可能性を秘めた自動運転に強く惹かれるようになりました。視覚障害者である私にとって、自動運転は単なる技術ではなく、「移動の自由」を取り戻す夢です。

きっかけは自動運転タクシーの動画

初めて視覚障害者が自動運転車に乗る様子を見たのは、2012年にGoogleが公開した動画でした。当時は「本当に実現できるのだろうか?」と半信半疑でした。

https://www.youtube.com/watch?v=cdgQpa1pUUE

しかし2024年、自動運転タクシーに視覚障害者が乗車する動画を見て驚きました。スマートフォンを操作し、クラクションの音で車の位置を確認して乗車する仕組み。しかも、アメリカの公道で実際に走っているのです。
この瞬間、「自分も試してみたい」と強く思いました。

https://www.youtube.com/watch?v=4OPiC-zXtJk&list=PLzaPe49p32aZ7SPFDhvgJV-cOpskQ5VYu&index=7

「KINTOテクノロジーズであれば、自動運転の技術にかかわることができるかもしれない。いつかは自分も自動運転にかかわれるような仕事がしたい。」
これが、私がモビリティカンパニーで働きたいと考えたきっかけです。長年培ったアクセシビリティの知識を活かし、視覚障害者の移動に貢献したいと考えています。

KINTOテクノロジーズで目指すこと

自動運転車が視覚障害者にとって当たり前になる未来を目指すとしても、すぐに実現できるわけではありません。多くの人にとって「視覚障害者」と「車」は最も縁遠い組み合わせでしょう。

前述のように、視覚障害者が誰かに車を運転してもらって目的地に行くことは想像できますが、単独で車に乗車して目的地まで行くことはあまり想像できないのではないでしょうか?
しかし、このようなニーズは確かにあって、特に地方で暮らす視覚障害者は自分だけで行きたいところにいつでも出かけられるような未来を夢見ています。
公共交通機関を利用すれば目的地の近くまで移動することはできますが、そこから目的地を探して移動することは容易ではありません。
例えば、歩行者用のGPSナビゲーションを使って移動したとしても、目的地が近づくと「まもなく目的地付近です」という案内とともにナビゲーションは終了してしまいます。
そこからのほんの数メートルが、見ることのできない視覚障害者にとっては大きなハードルとなることがあるのです。

このように、「視覚障害者」と「移動」に置き換えれば、目的を達成するために移動することは誰もが容易に理解できるかと思います。その手段が「自動運転車」になる未来を作るために、私は次のことに取り組みます。

1. アクセシビリティを組織の当たり前にする

モビリティ業界では、アクセシビリティの重要性はまだ十分に認識されていません。私は社内で丁寧に対話し、

なぜアクセシビリティが必要なのか
チームで何から始めるべきか
どんなゴールを目指すのか
を一緒に考えていきます。

皆さんとともに活動し、これまで想定されていなかったかもしれないユーザーのニーズや、どんなことに不便を感じたり、どんなふうに課題を解決しているのかを見ていただくことで、「アクセシビリティは自分たちには関係ない」と思われない組織にすること。それが最初の1年の目標です。
その結果、KINTOテクノロジーズが取り組む様々な活動のアクセシビリティが向上し、新たなユーザーにリーチできて、ゆくゆくはそれが組織の価値になり、社会を変えるような取り組みになればいいなと考えています。

2. 障害者が働き続けたい組織を作る

50人以上の企業には障害者雇用が義務付けられていますが、実際には「どう接すればいいかわからない」「どんな仕事を任せればいいのか想像できない」という声もあります。
定型化された仕事だけを任され、企業の中で孤立してしまうケースも少なくありません。

KINTOテクノロジーズには私のほかにも障害のある社員がいます。私の役割は、私たち障害者が組織で働く姿を見てもらい、同僚として共に会社の目標に向かって進める環境を作ることです。
そして、私たち自身が「ここで長く働き続けたい」といえるような組織を作っていきたいと思っています。

「組織の内側からしか変えられない価値」を最大化し、KINTOテクノロジーズの発展に貢献していきます。

最後に

視覚障害者にとって「移動の自由」は人生を変える力を持っています。私はKINTOテクノロジーズで、その未来を現実に近づけるために挑戦します。
この取り組みに共感していただける方がいれば、ぜひ一緒に「移動の未来」を考えていきましょう。

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