KINTO Tech Blog
Event

技術書典19へ出展しました!

Cover Image for 技術書典19へ出展しました!

この記事は KINTOテクノロジーズ Advent Calendar 2025 の12日目の記事です🎅🎄

はじめに

KINTOテクノロジーズのFACTORY EC開発グループでバックエンドエンジニアをやっている、うえはら(@penpen_77777)です。
技術書典19に、KINTOテクノロジーズの有志エンジニアによるサークル「KINTOテクノロジーズ執筆部」として参加してきました。
この記事では社内有志で技術書を作り上げるまでの道のりをご紹介します。

ちなみに今回作った新刊の紹介はこちらになります!無料なのでもしご興味があれば電子版のダウンロードよろしくお願いします。
https://blog.kinto-technologies.com/posts/2025-10-31-techbookfest19-announcement/
https://techbookfest.org/product/qCPrJpWLmKnLt7eWVd9zJ6

始まり

私はこれまでに技術本の執筆をしたことがあり、久々に技術本を書きたいなという思いがありました。
文章を他人に読んでもらうだけなら技術ブログや登壇でも十分なのですが、やっぱり自分の書いた文章が本になるのは感慨深いものがあります。

弊社では社員有志でサークルを組んで技術書を書くということがなかったため、今回チャレンジしてみることにしました。

仲間を作る

サポートしてくれそうな人を見つける

技術書典へ参加する約半年前の6月くらいから動き出し始めました。
早めにサポートしてくれそうな人を見つけておくとタスクを進めておく上で非常に心強いです。

弊社には技術広報グループがあり社員の技術的な外部発信の相談に乗ってもらえます。
やり遂げることができたのも技術広報のおかげだなと思っています。本当に感謝しています。

執筆に興味がありそうな人を見つける

技術書典への参加は初めての試みということもあって、本当に参加者が集まるのかが不安なところでした。
いきなり全社に参加者募集の告知をして、参加者を集めるのはハードルが高いと感じていました。

そこで興味がありそうな人に声をかけてあらかじめ参加する確度の高い人を集めることにしました。
弊社ではSlack上でtimes(分報チャンネル)を活用する人も多く、気軽に自分の気持ちを表明できるのが良いところです。
技術書典への出展したい気持ちを匂わせることで、興味がありそうな人が誰か知ることにしました。

ここで5人くらい集まったので、最悪全社告知して集まらなくても企画ができそうだなと思い、安心して進めることができました。

告知する

全社で執筆者を募集できるよう簡単なスライドを作りました。
技術書典について、執筆に対するメリット等をまとめていて参加を訴求する内容となってます。
告知スライド

イベントの規模を紹介するのに公式から出ている協賛資料が参考になりました。
https://techbookfest.org/assets/tbf18/for-sponsors.pdf

印刷所の選定をする

物理本を作るため印刷所の選定が必要になります。
技術書典ではバックアップ印刷所が設定されており、このバックアップ印刷所に入稿することで印刷から会場への納品までやっていただける非常に便利な仕組みとなっています。
バックアップ印刷所には日光企画・ねこのしっぽがあるのですが、今回は日光企画さんを選択しました。

組版システムを選定する・設定を整える

組版システムとは印刷向けの見た目に変換するものを言います。
技術書向けの組版システムとしてはRe:VIEWがよく使用されます。
独自の「Re:VIEWフォーマット」で記述されたテキストファイルをRe:VIEWに通すことによって、電子書籍としてよく用いられるEPUB、PDFなどに変換されます。
紙面上のスタイルの設定と内容が分離していることで、執筆者が見た目を意識せずどんな内容の文章を書くかという本質的な営みに集中できるのがメリットです。

今回は組版システム[1]として「Vivliostyle」を使用しました。
https://vivliostyle.org/ja/

VivliostyleはCSSを使って見た目を変えられるのが特徴で、フロントエンド技術に詳しい方であれば難なく使いこなせるかと思います。

ゼロから設定を整えるのは大変なので、今回はゆめみさんが配布されているテンプレートを活用させていただきました。
このようなテンプレートを配布いただき大変感謝しております。ありがとうございました!

https://github.com/yumemi-inc/daigirin-template

上記のテンプレートを元に以下の修正を入れました

  • タイトル・発行者・奥付けを今回の技術書向けの内容に修正
  • 紙面サイズをB5へ変更[2]
  • 目次の自動出力を有効化、うまく出力できていない箇所はテンプレートを調整

技術書典へサークル登録する

色々準備がある中で忘れそうにはなりますが、サークル参加申込は忘れずに行いましょう。
カレンダーに予定を入れたりする方が良いかもですね。

執筆者に書いてもらう

執筆者が執筆に困らないようガイドラインを作成し、共有しました。

  • 全体的なスケジュールとそれぞれのフェーズでやること
  • 執筆方法(Vivliostyle Flavored Markdown[3]の記法, PDFのプレビュー方法等)

ガイドライン

原稿管理

原稿管理はGitHubで実施し、mainブランチからそれぞれ執筆者ごとにブランチを切ってもらい執筆作業を行ってもらいました。
執筆者ごとにPRを出しておくと進捗確認ができて便利です。

Slackリストを活用する

書籍内でテーマが被らないようテーマが決まったらSlackのリストにまとめてもらうようにお願いしました。
他にも巻末に入れる自己紹介文や執筆状況等、自分で把握しておきたい内容を入れておくと見通しが良いです。
Confluenceで表を使って管理しても良かったのですが、個人的にはSlackの方が見る頻度が高いのとNotionのデータベースっぽく使えるSlackリストで管理していました。
テーマリスト

表紙を作成してもらう

技術書の表紙を自分で作るか悩んでいたところ、参加者の一人から「クリエイティブ室のデザイナーさんに協力をお願いしてみては?」と提案がありました。
せっかくなら人を集めてワイワイしながら作っていこうということで、デザイナーが生成AIを駆使して表紙を作成する「生成AI × ライブペインティング」イベントの開催が決まりました。

Vibe Painting Hour
今回の技術書を作るのに開催されたイベント「Vibe Painting Hour #01」

イベントでは5人のデザイナーの方に来ていただき、参加者が見守る中、1時間という制限時間で生成AIを駆使して表紙を作っていただきました。
「モビリティ感があって未来感のある表紙を作る」という、うえはらからの中身がふわふわした依頼にもかかわらず、最終的に上がってきた表紙の5案はどれもクオリティが高く1つに決めるのが勿体無いくらいでした!
参加者の多数決とうえはらの判断によって、今回の技術書の表紙が選ばれました。

表紙
新書「TECH BOOK By KINTO Technologies Vol.01」の表紙。

原稿の締切を設ける

こちらは重要です。入稿期限は絶対的な締切なので、それに合わせて余裕を持って設定した方が良いです。
また一発で原稿が揃うのはなかなかないと思った方が良いでしょう。
締切は1個だけではなくバックアップのためさらに2、3個設け、それぞれの締切で達成してほしい最低ラインを設定した方が良いでしょう。

執筆者間でレビューしてもらう

執筆者間でレビューしてもらいました。
レビュー項目は社外への外部発信時のレビュー項目に準じつつ、最終的には物理本にすることを意識して項目を設定しておくと良いでしょう。
原稿が出揃わないとレビューすらできないので、締切は早めに設定しておくことをお勧めします(2回目)。

校正

全員分の原稿を取りまとめた上で、全体の紙面の見栄えを調整していきました。
文字サイズが小さいことに気づいたため少し大きくしたり、目次だけで10ページと多くなってしまったので、目次に出す項目を絞ったりしました。
ページ数を4の倍数に調整しておかないと入稿を受け付けてくれないので、うまいことページ数の調整もしていきました。
この影響で表示が崩れてしまった章もあったので、執筆者に修正をお願いしていました。
時間がない中での作業だったので、締め切りは早めに設定しておきましょう(3回目)。

入稿

入稿用のPDFができたら印刷所に入稿していきます。
日光企画さんでは先に入金しておき、入稿用の表紙と本文データをフォームで送信すればOKでした。
ここでデータの不備があれば指摘があり再提出することになりますが、今回は特に不備もなく無事入稿できました。

ブース設営のシミュレーション

ブースの設営に詳しい技術広報の方に協力してもらいながら、前日にシミュレーションを行いました。
事前にブースのイメージを膨らませておきつつ必要なものも洗い出せたので、当日ブースを見て何となく思ってたのと違う...みたいなことにはならなかったと思います。

オフライン会場当日の様子

オフライン会場で出来上がった本を初めてみた時、思ったより分厚いなと感じました。
この分厚い本を無料で頒布したので、参加者からは驚きの声も聞かれました。
約300部印刷したのですが全て頒布できたので、初回参加の結果としては上々なのではないかと思っています!

ブース

https://x.com/KintoTech_Dev/status/1989983294059168095

国会図書館へ納入

技術書典の翌日、国会図書館へ納本しました。日本国内で頒布を目的として発行した出版物は原則納本の対象になるらしく、今回のような技術同人誌でも納本できるようです。

https://www.ndl.go.jp/jp/collect/deposit/deposit.html

日本国内で頒布を目的として発行された出版物は、原則として、すべて納本の対象となります(「納本制度の概要」参照)。
国立国会図書館に出版物を納本いただくと、その書誌データが「全国書誌」として国立国会図書館サーチで検索できるようになります。また、図書館資料として広く利用されるとともに、国民共有の文化的資産として永く保存され、日本国民の知的活動の記録として後世に継承されます。

納本には以下の記事も参考にさせていただきました。
https://qiita.com/mitsuharu_e/items/850ae6688a94ea3d67f3

いざ納本へ

国の中枢ということもあり、銀座線、丸の内線、半蔵門線といった様々な路線が乗り入れています。
2番出口が国会図書館の最寄りのため、路線によっては多少歩くことになりそうです。
案内板
駅周辺の案内。出口2が一番最寄りです。私は銀座線で向かったため、歩く量が多かった。

国立国会図書館の案内
国立国会図書館の案内。納本の方は通用口(西口)へという案内がある。

国立国会図書館の通用口(西口)から入って、建物の入り口にいる警備員さんに納本したい旨伝えると手続きをしてくれます。
国立国会図書館の通用口(西口)
国立国会図書館の通用口(西口)

納本の窓口に着いたら、納本する書籍を渡して書類に記入します。手続きが終わったら受領書を渡してくれます。
資料受領書
資料受領書

納本すると以下のように国立国会図書館サーチの結果に表示されるようになり、また国会図書館で資料として読めるようになります。
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I034410569

終わってみて感じたこと

一人で抱え込まず、助けを借りよう

書籍一冊作るだけでも決めることややるべきタスクが多く、一人だけで全て捌き切るのはだいぶ大変です。
他の人でもできる、むしろ他の人の方がうまくやれるタスクはお願いしていった方が良いです。

技術本によって繋がりが増えた

技術書典のオフライン会場での参加者との交流はもちろん、技術本の制作を通して社内有志で繋がりが深まったと思っています。

締切は多重に早めに入れておく

余裕を持って締切を設定したつもりがやってみると意外と時間がないなという気持ちになったので、次はもう少し余裕を持たせていこうと思ってます。多重で締切を設定することは大事です。

まとめ

技術書典19への参加の道のりには大変なことも多かったですが、終わってみると得られるものも多く本当に楽しかったです。
もしこの記事を読んで興味が湧いた方はぜひ技術本制作にチャレンジしてみてください。
また今後の技術書典でパワーアップした姿を見せられるよう頑張っていきます。

https://techbookfest.org/product/qCPrJpWLmKnLt7eWVd9zJ6

脚注
  1. 読み方は「くみはん」らしいです。毎回そばんと読んでしまいます。
    https://ja.wikipedia.org/wiki/組版 ↩︎

  2. ここでB5にはJIS B5とISO B5があることを知りました。同じB5でもサイズが異なるのでご注意を。 ↩︎

  3. 一般的なmarkdownを書籍特有の構造も表現できるよう拡張した記法。
    https://vivliostyle.github.io/vfm/#/ ↩︎

Facebook

関連記事 | Related Posts

イベント情報