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AIで本の表紙を1時間で作る。ライブペインティングを企画した話

Cover Image for AIで本の表紙を1時間で作る。ライブペインティングを企画した話

この記事は KINTOテクノロジーズ Advent Calendar 2025 の24日目の記事です。

こんにちは!
KINTOテクノロジーズのクリエイティブグループでデザイナーをしている桃井(@momoitter)です。

先日、AIを使ったライブペインティング形式で、1時間の制限時間でお題に挑戦する社内イベント 「Vibe Painting Hour」 を開催しました。
今回はその第1回として、技術書典に出展する技術書の表紙デザインをテーマに実施しました。

※技術書典(ぎじゅつしょてん)とは、エンジニアなどの技術者が自身の知見や取り組みをまとめた技術書を持ち寄り、展示・頒布する技術書専門のイベントです。

私はこの「Vibe Painting Hour」で、企画・全体のアートディレクション・イベント設計を担当しました。
この記事では、なぜこのイベントを企画したのか/どのように設計したのかを中心に紹介します。

keyvisual

なお、「技術書典」についての詳細は、うえはらさんのこちらの記事をご覧ください。
https://blog.kinto-technologies.com/posts/2025-12-12-techbookfest19-report/

実際にイベント内で表紙デザインがどのように作られていったかは、mayuさんのこちらの記事で詳しく紹介されています。
※こちらは12/25に公開予定です。
https://blog.kinto-technologies.com/posts/2025-12-29-ai-bookcover-process/

概要

今回実施したのは、AIツールを活用したライブペインティング形式のデザインイベントです。

制限時間は1時間
5名のデザイナーが同時に画像生成とデザインを行い、最終的に技術書典に出展する技術書の表紙デザインを、その場で決定しました。

完成したアウトプットだけでなく、生成の途中にある思考や試行錯誤のプロセスも含めて共有することを重視しています。

目的

このイベントには、いくつかの目的がありました。

1. AI×デザインの「プロセス」を見せたい

生成AIは、完成物だけを見ると「一瞬で作っている」「魔法のように出てくる」という印象を持たれがちです。
しかし実際には、

  • プロンプトの試行錯誤
  • 生成結果の取捨選択
  • どこで割り切るか、どこを粘るかという判断

といった、人の思考が大きく関わっています。

デザイナーがどう考え、どう生成し、どう決めていくのか。
そのプロセスをライブで見せたい(「デザイナーってすごいんだぜ!」を見せたい)、というのが大きな目的でした。

2. キャラクターを「みんなで育てる」フェーズに進みたかった

rupia
今回の表紙デザインでは、「るぴあ」というキャラクターを使用しています。
これは私がキャラクターデザインし、これまでAIの検証や、弊社のSNS・イベントでの発信に使われてきたキャラクターです。

これまで、るぴあを使った表現はどうしても自分一人で作ることが多く、表現の幅が狭まりやすい状態でした。
今回はあえて、

  • 他のデザイナーが、るぴあをどう解釈するのか
  • 同じキャラクターでも、どんな表現の違いが生まれるのか

を見てみたい、という狙いがありました。

それは、キャラクターを「個人で作るもの」から「みんなで育てるもの」へ移行するための、一つのステップでもありました。

企画の経緯

企画のきっかけは、弊社のAI推進メンバーのこの一言でした。

「デザイナーによるAIライブペインティングが見てみたい」

それとちょうど同じタイミングで、技術書典に向けた技術書執筆企画が進行しており「表紙デザインを制作してほしい」という依頼がありました。

そこで、

  1. ライブペインティングのリクエスト
  2. 表紙デザインの制作

この2つを同時に叶えてしまおうと考えたのが、今回のイベントの始まりです。

イベントのネーミングについて

naming
イベント名は、以下の3つを掛け合わせてVibe Painting Hourとしています。

  • AIを使って感覚的にコーディングする「Vibe Coding」から取った「Vibe」
  • ライブで制作するという意味での「Live Painting」
  • 制限時間1時間を示す「Hour」

事前ヒアリングとお題の作成

イベント前には、依頼主であるうえはらさんにヒアリングを行いました。

  • 技術書の想定読者
  • 技術書全体のトーン
  • 表紙に求める印象や方向性

そこから、下記の方向性が見えてきました。

  • 弊社の認知度からして、「KINTOテクノロジーズだから手に取ってみよう」という動機は生まれづらいので、キャラクターで引っかかりを作る
  • そのうえで、弊社の技術力や先進性を感じさせる
  • 弊社ならではの特色である「モビリティ」感も出す

ただし本番では、よりライブ感を重視する目的でお題は事前に共有せず当日に発表されます。

結果として当日は長い説明ができません。
そこで、ヒアリング内容をもとにお題を次の一文に圧縮し、当日デザイナーへ共有しました。

order

使用ツールとイベント設計の工夫

画像生成

使用するAIツールは指定せず、各デザイナーが慣れているものを選んでいます。

当日は主に以下のツールが使われていました。

  • Midjourney
  • ChatGPT(画像生成)
  • Photoshop

また、今回のイベントではあらかじめキャラクター「るぴあ」の画像を参加デザイナー全員に配布しておき、各AIツールで参照画像(リファレンス)として使える状態を用意していました。

これにより、

  • キャラクターの外見や雰囲気が大きくブレない
  • そのうえで、表現の解釈や世界観の違いが自然に出る
  • 「同じキャラクターをどう料理するか」に集中できる

という状態を作ることができました。

reference

レイアウト(Figma)

figmaboard
表紙のレイアウト作業にはFigmaを使用しました。

あらかじめ、

  • タイトル
  • ロゴ
  • ナンバリング(vol.01 など)

を配置した表紙用のアートボードを、参加人数分用意しています。

これは、要素の配置までライブでやってしまうと1時間で終わらないためです。
イベント中は、画像生成に集中できる状態を作ることを最優先にしました。

なぜこの設計にしたのか

ライブペインティングという形式上、
「自由度が高すぎると収拾がつかない」「制限しすぎると面白くない」というバランスがとても重要でした。

  • キャラクターは固定(参照画像あり)
  • レイアウトは半固定(Figmaで事前準備)
  • 表現と生成のアプローチは自由

という設計にすることで、
1時間という短い時間でも、各デザイナーの個性がしっかり見える状態を作ることができたと思います。

世界観について

world
今回のイベントでは、世界観づくりも重視しました。
一回きりのイベントではなく、今後も続けられるフォーマットにしたいと考えていたためです。

設定はこんな感じです。

  • ここは、とある町の「クリエイティブ相談所」
  • デザインに悩んだお客さんが相談に来る
  • そこには腕利きのデザイナーがいる
  • ただし彼らは気まぐれで、1時間以上は働きたがらない
  • 報酬は甘いお菓子

少し遊びのある設定ですが、この世界観があることでイベント全体に一体感が生まれました。

イベントの流れ(60分)

flow
イベントは、1時間で「生成 → 判断 → 決定」まで行う構成です。

1. オープニング(約10分)

世界観説明、依頼主紹介、相談内容・お題の発表、デザイナー紹介

2. 生成タイム(前半・約15分)

各デザイナーが画像生成を開始/同時にBGM生成デモや依頼主へのインタビューを実施

3. 中間チェック(約15分)

途中経過を共有し、使用ツールや現在の方向性を紹介

4. 生成タイム(後半・約15分)

中間チェックを踏まえて最終調整

5. 結果発表(約5分)

完成案を並べ、依頼主が採用デザインを選定!

その場で技術書の表紙を決め切るところまで含めて、イベントとして完結させました。

実際にどんな案が出て、どう決まったのか

proposal
当日は、同じキャラクターを使い、同じお題を受け取りながら、驚くほど素敵で個性あふれる表紙案が生まれました。
キャラクターの距離感や視線の向き、世界観の切り取り方、「技術書らしさ」の表現など、各デザイナーの個性がはっきりと表れています。

coverdesign
最終的には依頼主であるうえはらさんに選定していただき、
デザイナーのmayuさんのデザインが、実際に技術書典で使用する表紙として決定しました!

アンケート結果

イベント後に実施したアンケートでは、

  • 満足度:4.61 / 5
  • 再参加したい:89%

という結果でした。

特に多かった声は、

  • 生成プロセスが見られて勉強になった
  • ライブ感があって面白かった
  • 世界観や演出が良かった

といったものです。

これらの結果から、アウトプットだけでなく「生成していくプロセス」や「ライブ感」そのものがしっかり価値として受け取られていたことを感じました。

特に「また参加したい」という声が多かったのは、
この形式が一度きりではなく、今後も続けていけそうだという手応えにつながっています。

まとめ

AIを使えば、デザインは一瞬でできる。そんなイメージを持たれることもあります。
しかし実際には、考え、選び、決めるのは人です。

今回のライブペインティングでは、そのプロセスを1時間に凝縮して見せることができました。
今後も「クリエイティブのお悩みを、AIと一緒に解決する」そんな場を、形を変えながら続けていければと思います。

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