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ハッカソンからビジネス資産へ:Toyota Community by KINTO

Cover Image for ハッカソンからビジネス資産へ:Toyota Community by KINTO

👋 はじめに

こんにちは!Toyota Community by KINTO プラットフォームのプロダクトデザイナーのMoji です。

今回は、このプラットフォーム作成の裏話(コラボレーション、イノベーション、用途に合わせたデザインの道のり)についてご紹介できて嬉しいです。

私にとって、デザインは美しさを追求するだけのものではなく、課題を解決しながら、ユーザーのニーズとビジネスの目標をうまく調和させることだと思います。そういったわけで、Toyota Community by KINTOは私にとってとても刺激的なプロジェクトなのです。

Toyota Community by KINTO Toyota Community by KINTO のロゴと、プラットフォーム機能を示すモバイル インターフェースのモックアップ

🚀 背景

Toyota Community by KINTO は、ハッカソンで生まれたシンプルなアイデアから始まり、今ではレスポンスに優れた Webアプリに進化しています。現在、 トヨタの顧客やトヨタ車愛好家たちをひとつのグローバルなプラットフォームでつなぐことを目指して、顧客エンゲージメントを高めるための拡張性のあるソリューションとして提案できるよう、準備を進めています。

過去 2年間、このプロジェクトでは、単純に 設計と開発に取り組んでいたのではありません。 社内のフィードバックに対応し、国や地域による市場の微妙な違いを理解し、事業目標とユーザーのニーズの両方に沿った製品を継続的に改良する。このプロセスの連続でした。

 2022年 KINTO Global Innovation Days のハイライト 2022年 KINTO Global Innovation Days より。優勝したハッカソンチーム、チームコラボレーション、イノベーター・オブ・ザ・イヤー賞の盾の写真。

💡 チャレンジ

分散構造とバリューチェーンのギャップ

自動車業界では、分散型構造で運営されているブランドもあります。このアプローチでは、国や地域で異なる市場ニーズに柔軟かつ的確に対応できるという利点があります。一方で、グローバルなブランドとしての一貫性を保つことや、購入後の顧客とのつながりを効果的に維持する点では、課題が生じることもあります。

ここで、集中型ハブを構築する絶好のチャンスが姿を現します。このハブを通じて、ブランドは貴重な顧客の本音をくみ取り、ポジティブかつ影響力のあるかたちでブランドイメージを強化することができます。

競合分析

オンラインコミュニティの現状をより深く理解するために、オンライン上にある従来のカーコミュニティや競合プラットフォームを、 包括的に分析しました。

重要な気づき

  • 🚗 トヨタ車愛好家の中でも、特に旧車、または復刻モデルの所有者たちは、 Toyota Nation(VerticalScope が運営)や Reddit といった外部プラットフォームにアクセスして、交流したり、フィードバックを共有したり、自分の愛車について語り合っています。

  • 🌐 多くのプラットフォームではすでにコミュニティスペース(フォーラム)が用意されていて、ユーザー同士がつながり、意見を交換し、互いに学び合っているのです。

ですが、その中でひときわ目立ったあるギャップがありました。

  • 車好きは、自分の愛車を披露することにとても強い情熱を持っています。

    • にもかかわらず、車の所有者が自分専用のバーチャル・ガレージを作って、次のようなことを実現できる特別な場所がなかったのです。

      • 🛠️ 改造やカスタマイズの紹介
      • 📸 車の写真の共有

チャンスの特定

次の3つの戦略的な統合で、私たちのプラットフォームは他のライバルと一線を画す存在になりました。単なる 閉ざされたソーシャル空間 ではなく、ユーザーが本物のコンテンツに触れたり、それについて語り合えるゲートウェイにもなりました。

1.ミスター・ランクルとのつながり

  • TOYOTAの幅広いネットワークの一つとして、トヨタのランドクルーザーの元チーフエンジニアで、ミスター・ランクルとしても知られる小鑓貞嘉氏とつながる機会に恵まれました。

    • このご縁を通じて、限定動画および専用の Ask Me Anything (AMA) チャンネルを特集することができました。ユーザーはこのチャンネルでミスター・ランクルと直接やり取りをしたり、質問を投げかけたりしながら、貴重な気づきを得ることができます。

ミスター・ランクルこと小鑓貞嘉さんとのコラボレーションミスター・ランクルこと小鑓貞嘉さんとのコラボレーション。チームディスカッションや撮影風景など。

2.トヨタイムズから信頼できる自動車ニュースを共有

  • さらに、信頼性の高い自動車ニュースにも価値があることから、トヨタのオウンドメディアとして知られているトヨタイムズと交渉し、公式に掲載している記事を当社のWebアプリ上で共有することについて、許可をいただきました。

    • これにより、ユーザーは 信頼できるブランド 発のコンテンツ にアクセスできるだけでなく、自分自身のストーリーを共有したり、有意義なディスカッションに参加したりできるようになりました。

 Toyota Community by KINTO トヨタイムズの記事 Toyota Community by KINTO プラットフォーム、ランドクルーザーに関するトヨタイムズ記事スクリーンショット

3.「ガレージ」機能のご紹介

  • 車好きにとって、自分の愛車を披露したり、時間をかけて仕上げたカスタマイズや改造を共有したり、同じ情熱を持つ人たちとつながったりすることは、かけがえのない楽しみのひとつですよね。その気持ち、私たちもよく分かります。

    • そこで、「ガレージ」機能を導入しました。車のオーナーが、より楽しく、自分らしく愛車を紹介できるようになっています。この機能では、次のようなことができます。

      • 愛車の写真を紹介
      • カスタマイズや改造の記録、印象的な出来事の記録
      • 自分だけのストーリーを、魅力的なインターフェース上で共有

バーチャル ガレージ機能の例 Toyota Community by KINTOプラットフォーム。バーチャルガレージ内、ユーザーの1981年型ランドクルーザーFJ40ソフトトップのスクリーンショット。改造の詳細や思い出とともに紹介されています。

🎨 ソリューションの設計

ディストリビューターのフィードバック

実用最小限の製品 (MVP)の開発に入る前に、まずは主要な関係者から早期のフィードバックを得ることを目的として、モックアップとプロトタイプを設計しました。得られた意見をもとに何度も改良を重ねて、完成版のプロトタイプをいくつかのマーケットの地域ディストリビューターに提示し、さらなるフィードバックを募りました。

Toyota Communityの企画案へのフィードバックの初期モックアップ Toyota Community の初期モックアップ。上は、デザイン案に対するフィードバック募るために提案された機能。

受け取ったフィードバックを踏まえ、プラットフォームのデザインを新たなビジネス目標に沿う形に調整し、他と差別化できるポイントを強調しました。

こうして、より多くの時間やリソースを投じる前に概念実証(PoC)を確保することを目標に、MVPの本格的な開発に着手することができたのです。

🛠️ 第1段階 - 開発

実用最小限の製品(MVP)の作成

限られたリソースの中で、ギャップを解消して既存のプラットフォームにはない価値を提供するMVPを設計・開発しました。このプロダクトは、2つの主要機能を軸に、2024年7月に誕生しました。

💬 コミュニティセクション

トヨタの文化について語り合えるディスカッションスペースです。ユーザーはスレッドを立てたり、絵文字でリアクションを送ったりしながら交流できます。

  • ミスター・ランクル専用チャンネル:

    • ミスター・ランクルのガレージ、これまでの体験、インタビューなどを特集した限定コンテンツです。
    • ミスター・ランクルに何でも質問できる専用チャンネルで、愛好家がミスターと直接交流することができます。
  • トヨタニュースチャンネル:

    • トヨタについて、信頼できる自動車ニュースを共有する専用チャンネル。

🚘 バーチャルガレージ

ユーザーが自分の愛車を写真やストーリーとともに紹介し、ほかのユーザーと共有できる専用スペースです。

デザインプロセスの概要 Figmaのデザイン画面、各デザイン段階とマイルストーンを示すタイムライン。

モバイル ビュー画面 Toyota Community by KINTO プラットフォーム上のガレージ、ホーム、コミュニティの3セクションのモバイル画面

ユーザーからのフィードバック収集

製品にとって重要な転機となったのは、当社プロダクトオーナーが、 ドイツで開催されたランドクルーザーのイベント に参加したときでした。

トヨタ車愛好家との直接の交流を通じて、非常に貴重な気づきを得ることができました。参加者からは、小鑓氏のようなトヨタの象徴的な人物と交流しながら、自分の車を披露できるスペースがあるというアイデアに対して、好評の声が寄せられました。

 2024年 Buschtaxi イベント ハイライト ドイツで開催されたランドクルーザーイベント。改造車両、ランドクルーザーのオーナーや愛好家の集合写真。

このイベントの重要性を実感したことで、私たちはユーザーの記憶に残る、強い存在感というものを築こうと決めました。

KINTOとトヨタ、両ブランドのアイデンティティに自然に調和するロゴとマーケティング資料を作成するため、関係者と緊密に連携しながら、デザインをリードしました。

Toyota Community マーケティング資料 Toyota Community by KINTOのプロモーション資料のコレクション。バーチャルガレージとコミュニティのメリットを宣伝するチラシを掲載しています。

ユーザーからのフィードバックと、直前でのブランディング作業がうまくかみ合ったことで、 プロダクトの方向性ビジュアル アイデンティティ の両方が洗練されて、道筋がぐっと明確になりました。

🔄 第2段階- 改良

導入と拡張

大規模なユーザーに向けてMVPをテストするだけのリソースは、まだ十分にありません。ですが、 ディストリビューターのフィードバックやランドクルーザーイベントで得られた気づきをもとに、プラットフォームの改善は今も着実に進んでいます。こうした改良が、次の開発段階への足がかりになっています。

Toyota Community by KINTO プラットフォームは、拡張性のあるソリューションとして位置付けられつつあり、断片化されたバリューチェーンに関する課題に応えられる可能性を示しながら、地域ごとの多様なマーケットにも柔軟に対応できる仕組みを備えています。

この先にあるものは?

私たちは今後も、プラットフォームのブラッシュアップを進めながら、さらなる検討に向けて価値をしっかりと伝えられる機会を探っていきます。

✨ 結論

トヨタの取り組みが広がる未来へ

Toyota Community by KINTO は、グローバルなエンゲージメントをひとつの集中型ハブに集約し、再びつなげていくチャンスを提供しています。

さらにリソースを得られれば、このプラットフォームは貴重な資産となり、顧客エンゲージメントを高めるだけでなく、より強力なブランドロイヤルティの機会を育んでいける可能性を秘めています。

このプロジェクトは、単に UX デザイン機能の構築 が目的ではありませんでした。ユーザー中心のデザインが持つ真の力。それは、ビジネスの目標にも、文化的なニーズにも適応 していく力なのだということを実感しました。


この記事を楽しんでいただけましたら、ぜひ私の過去の記事もご覧ください。多様性とインクルーシブな視点の重要性や、TechBlog の再設計プロセス ついても詳しく書いています。

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