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SeleniumConf & AppiumConf 2026 参加・登壇レポート

Cover Image for SeleniumConf & AppiumConf 2026 参加・登壇レポート

SeleniumConf & AppiumConfとは

ブラウザ自動化・モバイル自動化のコミュニティを世界中から集める国際カンファレンスです。

  • Software Freedom Conservancyが運営しており、SeleniumおよびAppiumのコアコントリビューターも登壇します。
  • Selenium 5に関する今後の展望、WebDriver BiDi、Appium、Playwright、Cypress、AIテスト、セキュリティテスト、アクセシビリティテストなど、幅広いテーマを扱っています。
  • 基調講演・ハンズオンワークショップ・ネットワーキングの3つの形式で構成されています。
  • 全セッションに英語字幕とスペイン語通訳が提供されるなど、グローバルな参加者を意識した運営が特徴です。
  • 今年は 2026年5月6日〜5月8日 にスペインのバレンシア・Veles e Ventsにて開催され、20カ国以上から約350名が参加しました。
  • 1日目はハンズオンワークショップ、2〜3日目がカンファレンス本番という構成でした。

https://seleniumconf.com/

今回、KINTOテクノロジーズから呂文佳パンヌウェイの2名が登壇しました。世界の舞台でKINTOテクノロジーズの取り組みを発信できた、非常に貴重な機会となりました。

登壇者 発表タイトル(英語) 発表タイトル(日本語)
呂文佳 From 50% Cost Reduction to 90% Coverage: Playwright × AI for Non-Technical QA Teams コスト50%削減からカバレッジ90%へ〜Playwright × AI:コーディング経験が浅いQAチームの実践
パンヌウェイ Scaling Mobile Test Automation with Appium and AI: Real Lessons from KINTO Technologies モバイルテスト自動化のスケーリング Appium と AI の活用

バレンシアまでの道のり

CfPの告知から登壇当日まで、約8ヶ月の期間がありました。最初のきっかけは2025年9月、会社の同僚が社内SlackチャンネルでCfP(Call for Proposals)開始を告知してくれたことです。「ぜひ挑戦してみてください!」というその一言が、すべての始まりでした。

時期 マイルストーン 内容
2025年9月 CfP告知 会社の同僚がSlackチャンネルでCfP開始を告知。「ぜひ挑戦してみてください!」の一言がきっかけ
2025年10〜11月 CfP作成・社内レビュー チーム内でレビューを依頼し、発表内容と構成を確認し、ブラッシュアップ
2025年12月〜2026年2月 CfP提出・当選通知 最終タイトルを確定。SeleniumConfより提出確認メールを受信後、CfP当選の通知を受ける
2026年2〜4月 採択・スライド作成・発表練習 社内のAIファースト勉強会で日本語版の発表練習を実施。KTC室町オフィスのJCT(会議スペース)で英語版の発表練習と発音練習を2回実施
2026年5月 本番登壇 🎉 バレンシア Veles e Vents にて45分登壇
承認・ビザ手続きについて

CfP当選後は社内手続きも必要でした。社長に登壇内容を説明して承認をもらい、その後カンファレンスチームとメールでやり取りしながらビザ申請の手続きを並行して進めました。国際カンファレンスへの参加には、こうした社内外の調整も大切な準備の一部です。


参加セッション一覧

日時 セッション名 登壇者
05/06 09:00〜 Making Sense of Mobile Automation with Appium and WebdriverIO to turn frustration into understanding Wim Selles, Christian Bromann
05/07 11:20〜 Quantum Automation: Rethinking Selenium & Appium in the Age of AI Baris Sarialioglu
05/07 11:20〜 From 50% Cost Reduction to 90% Coverage: Playwright × AI for Non-Technical QA Teams 呂文佳
05/07 13:20〜 Test Automation Workflows with Cursor Filip Hric
05/08 Scaling Mobile Test Automation with Appium and AI パンヌウェイ

2026/05/06(1日目):ワークショップ

1日目はカンファレンス本番前のワークショップデーです。終日1つのセッションに集中して参加しました。

Making Sense of Mobile Automation with Appium and WebdriverIO

登壇者

内容と学び

このワークショップでは、Appiumをゼロからインストールして2分以内にセットアップが完了することを実際に確認しました。セットアップの簡単さを体感できたことで、導入ハードルへの認識が変わりました。

ワークショップ後、登壇者のWim Sellesさんと直接Appiumについて相談する機会も得ました。特に「要素特定にIDを使うかXPathを使うか」という実務的なテーマについて深く議論し、それぞれのメリット・デメリットを理解することができました。

  • ID: 高速・安定だが、開発側でIDが付与されていない場合は使えない
  • XPath: 柔軟性が高いが、UI変更に弱くFlaky Testの原因になりやすい
ディナーでの交流(1日目夜)

1日目の夜はカンファレンス関係者とのディナーがあり、非常に充実した交流の場となりました。

  • Kazuaki Matsuoさんと同席し、Appiumの導入経験や現場の課題について情報交換をしました。
  • Oscar Barriosさん(昨年も登壇された方)とは今年のイベントの印象やコミュニティの動向についてお話ししました。
  • Ivan del Visoさん(昨年も登壇された方)は、ご自身が開発したアプリを使った自動化テストのデモを見せてくれました。英語で1行のテストシナリオを書くだけで、実行・分析・ダッシュボードレポートの生成まですべてが完結するシステムで、非常に印象的でした。

2026/05/07(2日目):カンファレンス本番

2日目からいよいよカンファレンス本番です。複数のトラックが並行して開催され、関心のあるセッションを選びながら参加しました。

セッション①:Quantum Automation — AI時代のSelenium & Appium

Quantum Automation: Rethinking Selenium & Appium in the Age of AI(登壇者:Baris Sarialioglu)

AI時代における自動化テストの在り方を問い直す内容でした。セッション中に聴衆から質問が上がった場面では、登壇者が次のように答えたのが印象に残っています。


セッション②:呂さんの発表(11:20〜40分)

From 50% Cost Reduction to 90% Coverage: Playwright × AI for Non-Technical QA Teams

KINTOテクノロジーズの同僚・呂文佳さんによる発表です。コーディング経験が浅いQAメンバーでもPlaywright × AIを活用することでテストカバレッジを大幅に向上させた実践事例を紹介しました。同じチームのメンバーが国際カンファレンスで発表する姿は、大きな刺激になりました。


セッション③:Test Automation Workflows with Cursor(13:20〜90分)

Test Automation Workflows with Cursor

登壇者:Filip Hric

Cursor(AI統合コードエディタ)を活用したテスト自動化ワークフローについて90分間フルで講演されました。ClaudeとGitHub Copilotの基本的な設定・活用方法がメインテーマで、Mobile QAで一緒に作業している岡さんに教えていただいた内容とほぼ同じでした。世界のカンファレンスでも同様のアプローチが注目されていると確認できたことは収穫でした。

この日のセッション終了後、翌日に控えた自分の発表準備のためホテルへ戻り、最終調整を行いました。


2026/05/08(3日目):自分の発表

いよいよ自分の登壇日です。朝から会場でスライドの確認と発音練習を行いました。

発表概要

項目 内容
タイトル(英語) Scaling Mobile Test Automation with Appium and AI
タイトル(日本語) モバイルテスト自動化のスケーリング Appium と AI の活用
発表時間 40分 + 質疑応答
会場 Veles e Vents(バレンシア)
参加状況 満席

なぜCfPが採択されたのか

今回、採択につながったポイントは、単なる成功事例の紹介ではなく現場で直面した課題と改善の過程を正直に共有した点にあると考えています。

  • 実際に直面した課題と、改善によって得られた成果を正直に共有したこと(理想論ではなく現場の実態)
  • 具体的な数値で課題を提示:128件のテスト実行に12時間かかっていたという課題を可視化
  • Claude・Copilot・DevinAI の実践的な活用方法と3ツールの比較
  • 聴衆が持ち帰ってすぐに実践できるチェックリストを提供したこと

発表構成(45分)

# セクション名 内容
1 The Breaking Point 128テスト・実行12時間という限界点と、その背景にある課題
2 Framework Evolution 課題解決のためのフレームワーク再設計と進化の過程
3 AI Integration Claude・Copilot・DevinAIの統合で得られた成果と課題
4 Tools to Culture ツール導入にとどまらない「チーム文化」への変革
5 Visual Regression Test AIを活用したビジュアルリグレッションテストの実践
6 Real Impact & Takeaways 実際の改善数値と、明日から使える実践チェックリスト

当日の会場の様子と反響

20カ国以上から参加者が集まる満席の会場での登壇でした。発表後の質疑応答では予想以上に多くの質問が集まりました。

  • ドイツ在住のパキスタン出身のエンジニアから、Appiumの社内導入に関する具体的な質問を多数いただきました。自分たちのチームでも同様の課題を抱えており、ぜひ参考にしたいとのことでした。
  • 複数の参加者から「自分たちの導入方法の参考になった」と直接声をかけていただきました。

発表がただの情報共有にとどまらず、世界中のエンジニアの実務に役立ったと感じることができ、大変嬉しかったです。


スポンサー企業との交流と自動化テストツールの調査

カンファレンスにはテスト自動化ツールのスポンサー企業がブースを設けており、担当者から直接、各ツールの詳細を聞く貴重な機会がありました。ここでは、カンファレンスの場で実際に収集した情報をもとに、4つのツールを比較・整理します。

各ツールの概要

ツール 特徴
CloudBeat テスト自動化、実行、分析、モニタリングを統合したクラウド型の品質管理プラットフォーム
Sauce Labs エンタープライズ向けクラウドテストの先駆的存在。Salesforce、Twitter、Bank of America などの大手企業で採用実績がある
BrowserStack 3,500以上のブラウザ/OS組み合わせ・30,000台以上の実機デバイスを持つ業界でも有数の大手
LambdaTest 2026年1月に「TestMu AI」へリブランドしAIネイティブ化。KaneAIによる自然言語からのテスト自動生成が特徴

機能比較マトリクス

評価項目 CloudBeat Sauce Labs BrowserStack LambdaTest
Webテスト
モバイルアプリテスト
コードレステスト
並列実行
CI/CD連携
AI機能
実機デバイス数 最多
価格 高〜中 低〜中
日本語サポート
初心者にとっての導入しやすさ

凡例:◎ 優秀 ○ 良好 △ 要改善

各ツールの詳細印象

CloudBeat

強み

  • コードレステストが充実しており、プログラミング経験がなくてもテスト作成・実行が可能
  • Selenium・Appium・Cypress・Playwright等の主要フレームワークと幅広く統合
  • AIドリブンなテストレポートで根本原因分析(Root Cause Analysis)が容易
  • テスト実行・管理・モニタリングをすべて1プラットフォームで完結できる

弱み

  • モバイルアプリテスト(ネイティブアプリ)の対応デバイス数がBrowserStackなどに比べて少ない
  • 英語のみの対応で、日本語UIや日本語サポートが提供されていない
  • 他ツールと比べると国内での導入事例や公開情報が少なく、長期利用を前提とする場合は追加調査が必要
Sauce Labs

強み

  • 長年の実績を持つエンタープライズ向けプラットフォーム。信頼性・安定性が高い
  • SOC2 Type II・GDPR・ISO 27001等のセキュリティ・コンプライアンス認証を取得
  • Webテストもモバイルアプリテストもどちらもカバーできるオールラウンダー

弱み

  • 今回確認した条件では4ツールの中でも価格面の負担が大きく、中小チームや予算が限られた組織には慎重な検討が必要
  • コードレステスト機能が弱く、プログラミングスキルがないメンバーには難易度が高い
  • 一部CI/CDツール(AWS CodePipeline・GitLab CI等)に非対応
BrowserStack

強み

  • 実機デバイス数・ブラウザ組み合わせ数が業界最多水準(30,000台以上)で、網羅的なテストが可能
  • Accessibility Testing・Percy Visual Testingなど高度な付加機能が充実
  • カスタマーサポートの評判が良く、ドキュメントが整備されている

弱み

  • 料金が高額で、コスト面での負担が大きい
  • 基本的にSelenium/Appium等の自動化スクリプト記述が必要で、非エンジニアには敷居が高い
  • ネットワーク遅延や実機テストでの偽陽性(誤検知)が報告されることがある
LambdaTest(現 TestMu AI)

強み

  • KaneAIにより、自然言語でテストケースを記述するだけでスクリプトが自動生成される
  • 今回比較した条件では、4ツールの中でもコストパフォーマンスが高いと感じた
  • Jenkins・GitLab CI・Azure Pipelines・AWS CodePipelineを含む幅広いCI/CDツールに対応
  • HyperExecuteによる超高速な並列テスト実行が可能

弱み

  • 実機デバイスの実際の可用性がBrowserStackに比べると劣る場合がある
  • テスト分析レポートの詳細度が競合より低く、根本原因分析に限界がある
  • UIのナビゲーションが複雑で、習熟に学習コストがかかる

総合評価と推奨

現状のチーム状況(非エンジニアメンバーでも扱いやすいこと、Web・モバイルアプリの両方に対応できること)を踏まえた評価です。

ツール 評価 推奨優先度 コメント
LambdaTest ★★★★☆ 第1候補 AI機能、コスト、幅広いCI/CD連携の観点から、現状のチームに最も適している
CloudBeat ★★★★☆ 第2候補 コードレス機能が充実。ただし、モバイル対応やサポート面は追加確認が必要
BrowserStack ★★★☆☆ 将来候補 エンジニア体制が拡充した場合の有力な候補
Sauce Labs ★★☆☆☆ 保留 現状のチーム構成では導入ハードルが高く、コスト面でも慎重な検討が必要

感想・学び

海外カンファレンスならではの気づき

現地での交流から得た、世界のQA事情についての気づきも多くありました。

  • 開発とQAを兼務しているエンジニアが多い — 日本のように専任QAチームが分離している体制は珍しく、開発者自身がテストも担う形が世界的には一般的なようです
  • ノーコードの自動化ツールを利用している人は少数派 — コードを書いてテストを自動化するスタイルが主流で、ノーコードツール利用者は少数派という印象でした

自動化テストの現状と課題

Flaky Testは自動化テストにおけるグローバルな課題であり、その解消こそが現代のテストエンジニアに求められていることを、改めて実感しました。AIツールを活用した根本原因分析や、要素特定用のIDを活用した安定したテスト設計が、この問題への有効なアプローチとなるでしょう。

まとめ

約8ヶ月の準備を経てバレンシアの国際舞台に立ち、世界中のエンジニアとKINTOテクノロジーズの取り組みを共有できたことは、自分にとって大きな経験となりました。セッションで得た知識・現地での人脈・ツール各社との情報交換、そして自分の発表への反響——すべてが今後の業務に活きる財産です。来年のSeleniumConfにも引き続き注目していきたいと思います。


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