Hardening Designers Conference 2025 参加レポート
はじめに
こんにちは!KINTO テクノロジーズ クラウドセキュリティGの大高です。
普段は、クラウド環境のガードレールの整備とCSPMや脅威検知を利用した監視と改善活動に取り組んでいます。
現在のセキュリティを取り巻く状況について最新の情報にキャッチアップすべく、Hardening Designers Conference 2025に参加しましたので、レポートをお届けします。
Hardening Project とは
Hardening Projectは、実践的なサイバーセキュリティスキルの向上を目的とした競技型のイベントです。
プログラムの参加者は脆弱性を抱えたシステムを運用しながら、外部からの攻撃に対して防御・復旧・改善を行い、現場さながらの対応力を養います。
単なる技術力だけでなく、チームワークやドキュメント整備、運用体制の構築など、総合的なインシデント対応力が評価される点が特徴です。
今回参加した、『Hardening Designers Conference 2025』は、10月の競技型イベントに向けて、『Invisible Divide』というテーマをもとにした、ハンズオンとカンファレンスという位置付けのイベントです。
Day1 Hands-on Program
ハンズオンでは、『Living off the Land』呼ばれる攻撃手法について体験しました。
Living off the Landとは、攻撃者がシステムに元々備わっている正規ツールや機能を悪用して侵入・操作を行う手法です。例えば、Windows 環境ではPowerShellやWMIなどを使うことで、攻撃を行います。
ポイントは、攻撃者が使用するツールは標準搭載のツールや機能であり、外部から持ち込んだファイルなどを使用しないため、通常のオペレーションとの判別が難しく、セキュリティツールによる検知が困難になるという点です。
攻撃に使われるコマンド例には、かつて私がシステム管理をしていた際にお世話になったコマンドもいくつか含まれていました。
通常の運用の中で使われないツールやコマンドであれば無効化することで対策できるかもしれませんが、頻繁に使用し簡単に無効化できないものであれば、ログを取得して監視するなどしかないのかもしれません。
サーバー攻撃が高度化し、攻撃操作と正規のオペレーションの境界が非常にわかりにくくなっていることを実感したワークショップでした。
Day2・3 Conference Program
2・3日目は、様々なLTやセッションを通して、サイバーセキュリティの文脈における『分断』について、最新技術の共有や取り組みの紹介、トークセッションが行われました。
セキュリティの現場では、さまざまなステークホルダー間に「分断」が存在し、それがHardening(セキュリティ堅牢化)を阻む障害となることがあります。例えば、実際の現場では以下のような分断が発生しています。

開発・運用・セキュリティ担当者間の分断
機能の実装や運用の効率性を重視するあまり、セキュリティが後回しにされることがあります。例えば、パスワード管理やアカウント制御が適切に行われず、脆弱性が生まれることがあります。これを防ぐには、セキュリティを「制約」ではなく「品質の一部」として捉え、開発初期からセキュリティ要件を組み込むセキュリティバイデザインやシフトレフトの取り組みが重要になってきます。
システム利用者とシステム開発者・運用者の分断
システムの利用者は使いやすさを求める一方で、セキュリティの重要性を理解していないことがあり、技術者はシステムへの機能要求とセキュリティの実装の間で板挟みになることがあります。このギャップを埋めるために、ユーザーへの教育とシステムの構築・運用の際に利用者との丁寧なコミュニケーションを図り理解を求める姿勢が必要になります。
ルール策定者と実行者の分断
ルール策定者(セキュリティ担当者)は公的機関や専門機関が公表している様々なガイドラインを参考に理想的なベースラインやルールを定めますが、現場(システム開発・運用担当者)ではシステム上の制約や運用負荷によりベースラインに忠実な実装が困難な場合があります。実際に適用するには、制約や運用負荷を考慮した上で、適切にセキュリティを実装できるように柔軟な対応を行うことが重要です。
攻撃者と防衛者の分断
攻撃者が技術革新と連携によって高度な攻撃を仕掛ける一方、防衛者はコストや関係者の理解不足によりセキュリティ対策が後手に回ることがあります。サイバーセキュリティ被害にあった企業は情報開示をためらい、同様の被害を防ぐための知見が共有されないこともしばしばです。防衛側も情報共有や連携を強化したいところですが、なかなか思うように進まない状況があります。
AIと人間の分断
AIを使用したプログラムコードの生成や生成AIを用いたSOC業務の高度化など、ITの現場では生成AI活用の取り組みが広がっていますが、生成AIは明確な指示がなければセキュリティを考慮することができない場合が多いというのが現状のようです。生成AIの発展は目覚ましいですが、まだ人間とAIの間には、能力に差があるようです。AIを適切に活用するには、プロンプト設計やガードレールの導入など、人間側の工夫がまだまだ不可欠です。
改めて考えると、実に多くの『分断』が存在していることがわかります。
セキュリティについて、こういった切り口から考えたことはなかったため、非常に参考になりました。
『分断』を乗り越えるKINTOテクノロジーズの取り組み
私たちクラウドセキュリティGでは、「ビジネスのためのセキュリティ」を基本方針とし、セキュリティがビジネスの足かせになるのではなく、ビジネスを加速させる存在であるべきだと考えています。
セキュリティ対策は以下の2つの側面から実施しています
- 予防的ガードレール:アカウントのセキュリティプリセット環境(開発チームに提供する前に最低限必要なセキュリティ設定を事前に実装したアカウント)を提供し、初期段階から安全な設計を支援。
- 発見的ガードレール:Sysdig、AWS Security Hub、Amazon GuardDutyなどを活用したSOC監視により、リアルタイムでの脅威検知と対応および定期的なPosture管理による、問題のある設定のカイゼン活動を実施。
これらのセキュリティ対策・運用を通して、自社のセキュリティガイドラインを遵守しつつ、開発者が必要なセキュリティを担保された環境かつ自由に安心して開発に集中できる環境を整備する取り組みを進めています。これは、ルール策定者と実行者の分断及び開発・運用・セキュリティ担当者間の分断を乗り越えるための取り組みといえます。
また、AIセキュリティについても少しずつ取り組みを開始しています。(具体的な取り組みについてはこちら)しかし、技術の進化やトレンドの変化が非常に速く、現状では少々後手に回っている印象です。社内においても生成AIの業務利用やプロダクトへの実装は活発に進んでおり、どのようにコントロールを実装し、AIとの分断を乗り越えていくのかが今後のチャレンジとなります。
さらに、IPAが公開している「家づくりで理解する要求明確化の勘どころ」を参考に、KINTOテクノロジーズのシステム開発プロジェクトにおける心構えを見直す取り組みを進めています。これは、システム構築に限らず、セキュリティの観点からも、システム利用者と技術者の間にある分断を意識し、より良い関係性と成果を生み出すための取り組みといえます。IPAの家づくりについては、こちらを参照ください。
まとめ
Hardening Designers Conference 2025を通して、普段自分自身が意識したことのない『分断』という観点から、さまざまなセキュリティの動向を学ぶことができ、有意義な時間となりました。また、自分の組織のセキュリティを『分断』という観点から確認してみることで、今の取り組みについて再確認することができました。
これからも、より良いセキュリティを実現すべく『分断』を乗り越えていく取り組みを継続・改善していきたいと思いました。
さいごに
私の所属するクラウドセキュリティ グループでは、一緒に働いてくれる仲間を募集しています。クラウドセキュリティの実務経験がある方も、経験はないけれど興味がある方も大歓迎です。お気軽にお問い合わせください。
詳しくは、こちらをご確認ください。
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