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モビリティのデータとは: 何が送られてきて、どう分析されているのか
要約を読む
コネクティッドデータとは、車がクラウドに送るデータで、車速や位置情報などが含まれます。このデータをもとに、運転者の安全運転スコアを作ったり、交通情報を作ったりしています。その中で、データの内容や分析の流れ、使われ方、そして扱うときに起きる問題を、7割以上の人でも理解できるようにまとめます。 データは3層に分かれます。走行状況は車速や加速度など、走行中ずっと送られます。車両状態は警告灯や故障診断の情報で、異常が起きると送られます。車外画像は衝突や悪路のときなど、特定の条件が成立したときに送られます。この分類は、データの性質が違うため、前処理の仕方にも影響します。 生のデータはそのままでは意味がありません。まず時系列として受け取り、その後、1回の移動として区切ります。その上で、急ブレーキなど、閾値を超える行動を抜き出し、最後にドライバーや道路単位に集約します。この4段階の処理が、意味のある指標を作ります。位置情報はマップマッチングで道路に紐づけますが、トンネルや並走道路では誤って別の道路に当たることがあります。 集約の単位によって、使い方が変わります。ドライバーごとなら保険料の割引に使えます。車種ごとなら開発にフィードバックできます。道路単位なら、渋滞の末尾を検知したり、通れた道マップを作ったりできます。トヨタでは、こうしたデータを「コネクティッドサービス」「いいクルマづくり」「いい町づくり」と分類しています。 データを使うときには4つの問題が起きます。まず、観測できる車は全車ではなく、同意した車だけなので、選択バイアスがあります。次に、車種やグレードによってログ項目が違うため、今後も変化します。そのうえで、データが通信で途中で切れて、後からまとめて届くため、時刻がずれてしまいます。最後に、位置情報の測位誤差で、別の道路に当たることがあり、マップマッチングの精度がすべての分析を左右します。 こうした問題は、分析者が設計する部分にあります。データの「何を測るか」の設計がまだ決まっていないのが、大きなポイントです。急ブレーキの閾値が事業者ごとに違うため、同じデータでも結論が異なります。だから、分析の設計がサービスの質や安全運転に直結します。この設計の自由度が、安全で快適なサービスを生み出す可能性をもたらします。
AI が生成した要約です。正確な内容は本文をご確認ください。
はじめに
想定読者:データサイエンティストなど、日常的にデータを扱っていて、コネクティッドデータは初めての方。
この記事で分かること:コネクティッドデータの中身、一般的な分析の流れ、それが何に使われるか、扱うときに詰まる点。
こんにちは。KINTOテクノロジーズのデータサイエンスGに所属するfalsenineです。
コネクティッドデータとは、通信機能を持つクルマが、クラウドに送るデータのことです。車速や位置情報などが含まれ、運転者ごとの安全運転スコアを保険料の割引に反映する保険や、交通情報の生成などに活用されています。
なお本記事は、各社が公開している資料をもとに、モビリティデータ全般の一般的な扱いを整理したものです。特定のサービスの実装や、当社の運用そのものを説明したものではありません。
コネクティッドデータの中身
コネクティッドデータは、生成源で3層に分けると整理しやすいです。トヨタの公開資料は、車載通信機(DCM)経由で取得する車両データを「走行状況に関するデータ」と「車両状態に関するデータ」に大別しています。これに車載カメラからのデータを加えた3層で、本記事では主要なデータを整理します。
| 層 | 代表的な項目 | 取得のトリガ |
|---|---|---|
| 走行状況 | 車速、エンジン回転数、加速度、アクセル/ブレーキ操作、シフトポジション、走行距離、位置情報 | 走行中に継続。位置情報や車速は定期送信 |
| 車両状態 | 警告灯の表示情報、ダイアグ(故障診断)情報 | 状態変化・異常検知 |
| 車外画像 | 車外の動画(前後数秒〜約2分) | 衝突相当、悪路、新規開通道路などの条件成立時 |
層で分ける理由は、粒度と扱いが違うためです。走行状況は連続的な時系列、車両状態はイベントログ、車外画像は条件付きのスナップショットに近いデータとなり、同じ車両データでも、前処理が異なります。[1][2][3]
どう分析するのか
走行状況を例に挙げましょう。生の信号は、そのままでは何の指標にもなりません。モビリティのデータ分析は、単位を揃え、関心のあるイベントを定義し、用途に合わせて集約するという加工を重ねて、生の信号を意味のある指標に変えていく作業です。以下の4階層は、各社の公開資料に共通して現れる中間成果物を本記事で整理したもので、業界共通の呼び方ではありません。
| 階層 | やること | 出てくるもの |
|---|---|---|
| 信号 | 車速・加速度・位置を時系列で受け取る | 生の時系列 |
| トリップ | 一般的には、エンジンのON/OFFや一定時間以上の停車を境界に区切る(定義は事業者により異なる) | 1回の移動 |
| イベント | 閾値を超えた挙動を抜き出す | 発生回数と発生地点 |
| 集約 | ドライバー・道路リンク・メッシュのどれかに寄せる | スコア、旅行時間、混雑度 |
位置情報は道路に紐づけます。この処理はマップマッチングと呼ばれますが、正しく紐づくとは限りません。トンネルで測位できない、高速道路と一般道が並走する、都市部で誤差が大きい、道路形状が複雑、といった条件では別の道路に当たります。地図に載っていない細い道を走った場合も、載っている道のどれかに寄せられます。
イベントが設計のポイントです。急ブレーキ判定の閾値は、事業者ごとに異なります。プローブデータの提供事業者の説明では、閾値0.3Gなら3秒間に約30km/h、0.25Gなら約25km/hの減速を検出するとされます。0.05Gの違いで拾う挙動が変わり、同じ生データから別の結論が出ます。[4][5]
何に使われているのか
集約でどの単位に寄せるかが、用途を決めます。トヨタは車両データの利活用を「コネクティッドサービス」「いいクルマづくり」「いい町・いい社会づくり」に分類しています。
| 集約単位 | 用途区分 | 例 |
|---|---|---|
| ドライバー・車両 | コネクティッドサービス | 運転特性による保険料割引 |
| 車両(車種横断) | いいクルマづくり | 品質改善、開発へのフィードバック |
| 道路リンク・メッシュ | いい町・いい社会づくり | 通れた道マップ、交通情報、道路保守点検 |
道路単位に寄せた例が、高速道路の渋滞末尾検知です。車速の低い車両が集まる区間を特定し、その下流を渋滞末尾と定義しました。クラスタリングとカルマンフィルタで推定し、路側レーダーによる既存ソリューションと重なる精度を確認しています。センサーを設置する代わりに、走っているクルマをセンサーとして使う発想です。[1:1][6][7]
扱うときに詰まる4点
ここまでの変換は分析者が設計できます。一方で入力の条件は決められません。クルマ1台には100台以上のECU(電子制御ユニット)が載っていますが、クラウドに届くのは、そこから必要な項目だけを選んで圧縮したものです。ログの設計権が車両側にあるということです。
| Webのアクセスログ | 車両データ | |
|---|---|---|
| ログ項目の決定 | 分析する立場の人。あとからタグを追加し、計測内容を変更できる。 | 車両の開発時点。車種・グレードで違う |
| 母集団 | 対象ユーザーの全数 | 同意した車両のみ |
| データの到着順 | ほぼ生成順 | 通信が切れると車内に滞留し、後からまとめて届く |
ここから4つのズレが生じ、そのまま技術課題になっています。
- 母集団のズレ:同意した車両しか観測できません。全数ではない標本から全体を推定するため、選択バイアスが影響します。
- スキーマのズレ:項目は車種・グレードで異なり、今後も変わります。スキーマ進化を前提にした設計が必要です。
- 時刻のズレ:生成時刻と到着時刻が乖離します。集計ウィンドウの締め方と再計算の設計が論点になります。
- 位置のズレ:測位誤差や並走道路のせいで、別の道路に当たることがあります。マップマッチングの精度が、下流の集計すべてを左右します。
また、位置情報や走行履歴は、個人の行動が表れるデータです。扱う際は、匿名化や利用目的の適切性が重要になります。[1:2][7:1][8][9]
活かせる経験と、新しく覚えること
活用できるスキルは、SQL、分散処理、時系列の前処理、因果推論や機械学習の設計力です。4階層の変換自体は、扱ったことのある処理の組み合わせに見えるはずです。新しく覚えるのは、クルマの信号の意味と、閾値や集約単位をどう決めるかのビジネス感覚です。
個人的に面白いと感じるのは、この分野では「何を測るか」の設計がまだ固まっていないことです。急ブレーキの判定基準ひとつ取っても事業者ごとに異なり、その設計が分析の結論やサービスのあり方に影響します。整備されたログを渡されて分析するのではなく、測り方から考える余地が残っている。だからこそ、分析する人の設計しだいで、より安全な運転を促し、より快適なサービスを生み出せる可能性があります。ここが一番の醍醐味だと思っています。
位置情報の扱いについては、KINTOテクノロジーズの勉強会「Mobility Night #1 - GPS・位置情報」の内容をテックブログで公開しています。GPSの精度をどう扱うかといった、実務寄りの論点が並んでいます。
トヨタ自動車「お客様のクルマからの車両データの取得と利用について」 https://global.toyota/jp/sustainability/privacy/data-utilizing-initiatives/index.html ↩︎ ↩︎ ↩︎
トヨタ自動車「コネクティッドカーから取得するデータの利活用・保護の取組みについて」(2019) https://toyota.jp/pages/contents/tconnectservice/contents/pdf/toyota_datapolicy.pdf ↩︎
トヨタ自動車「車載カメラによる走行環境画像の取得と利用について」 https://global.toyota/jp/sustainability/privacy/on-board-cameras-initiatives/ ↩︎
住友電工システムソリューション「Traffic Vision プローブデータ&サービス よくある質問」(Hondaカープローブデータの仕様。急ブレーキ閾値 0.3G/0.25G の検出範囲) https://www.seiss.co.jp/products/tv_probe/faq.html ↩︎
KDDI「商用車のプローブデータ」(矢崎エナジーシステム製デジタルタコグラフによる商用車プローブの仕様。トリップ判定はエンジンON/OFFまたは滞在時間15〜120分の指定。マップマッチングが正しく判定されない条件、DRM基本道路に未定義の道路の扱い) https://biz.kddi.com/service/iot-cloud-data/data/probe/ ↩︎
トヨタ自動車「トヨタのコネクティッドカー向けに国内初の運転挙動反映型テレマティクス自動車保険を開発」(運転特性の評価項目) https://global.toyota/jp/detail/19575777 ↩︎
TECH PLAY「【TOYOTA✕ビッグデータ】車両データの活用事例」(トヨタ主催イベント講演録。ECU構成・渋滞末尾検知) https://techplay.jp/column/1977 ↩︎ ↩︎
APC技術ブログ(Data + AI Summit 2025 トヨタ登壇セッションの二次報告。遅延データの記述に使用) https://techblog.ap-com.co.jp/entry/2025/06/26/154309 ↩︎
KINTO Tech Blog「Mobility Night #1 - GPS・位置情報」 https://blog.kinto-technologies.com/posts/2024-12-10-Mobility-Night-1-GPS-位置情報/ ↩︎
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